東京にある日本庭園のなかから、無料で入園できるスポットを厳選してご紹介します。いずれも、実際に私が足を運び、「また訪れたい」と思ったおすすめの庭園ばかり。ふらっと立ち寄れば、忙しい日常を忘れて癒しのひとときを過ごせますよ。
1. イチョウ並木が美しい!大田黒公園(荻窪)

荻窪駅といえば、駅直結のショッピングモール「ルミネ」もあり、活気あふれる雰囲気です。そんな賑やかな駅前から歩いて10分ほど。住宅街のなかに、ひっそりと静けさただよう「大田黒公園」が広がっています。
この公園は、日本における音楽評論の草分け的存在である大田黒元雄氏の屋敷跡を整備したもの。

大田黒公園の大きな見どころの一つが、正門からまっすぐにのびる「イチョウ並木」です。白い御影石の小道に沿って27本のイチョウが並び、その樹齢は100年を超えるといいます。約70メートルつづく小道は、晩秋には黄金色に輝きます。
また奥に見える「庭門」との相性も抜群。ここが東京であることを忘れ、京都を旅しているような気分になります。

大田黒公園は池泉回遊式庭園(ちせんかいゆうしきていえん)です。池のほとりにはあずまやが設置されており、趣を感じさせます。

池をのぞくと、立派な錦鯉がゆったりと泳いでおり日本画のよう。橋の近くに集まってくるので、すぐ間近に鯉を眺めることができます。この鯉は、杉並区と自治体交流している新潟県小千谷市から寄贈された錦鯉とのこと。

大田黒公園といえば、紅葉のライトアップが有名です。普段は入園無料ですが、ライトアップ期間中の夜は有料に。その分、闇に浮かぶ紅葉の美しさは格別で、毎年多くの人が訪れます。
また、春から夏にかけては青もみじが鮮やか。春から赤い葉っぱが楽しめる「ノムラモミジ」も顔をのぞかせます。園内には60本以上のもみじがあるそうですよ。

大田黒公園
杉並区荻窪3-33-12
公式サイト
2. 庭を眺めて抹茶タイムも!肥後細川庭園(江戸川橋)

肥後細川庭園があるのは、「ホテル椿山荘東京」のお隣。東京メトロ有楽町線「江戸川橋駅」や東京メトロ東西線「早稲田駅」から徒歩15分ほどでアクセスできます。
かつては熊本藩主・細川家の下屋敷があった場所。園内を歩いていると、「こんなに美しい日本庭園を無料で楽しめるなんて!」と、思わず嬉しくなってしまうほどです。
ちなみに「肥後」とは、現在の熊本県にあたる旧国名です。

庭園のシンボル的存在となっているのが「松聲閣(しょうせいかく)」。明治20年頃に細川家の学問所として建てられた建物です。

2階は庭園を一望できる展望所になっており、窓いっぱいに広がる緑を眺めていると時間が経つのも忘れそうになります。

また、1階の休憩室には喫茶「椿」があり、お抹茶と細川家秘伝の銘菓を復元した「加勢以多(かせいた)」を味わえます。
庭園を目の前にしながら過ごすひとときは、まさに至福の時間です。

肥後細川庭園では、季節の花が彩りをそえます。初夏にはあじさいや、約28種類の肥後花菖蒲が艶やか。
春にはツツジや藤、肥後芍薬、桜、2月から3月初旬には梅や肥後椿、冬には水仙、秋には彼岸花や肥後山茶花、そして紅葉。紅葉の時期にはライトアップも行われます。
四季折々の表情を見せる庭園は、いつ訪れても新鮮な発見があります。

肥後細川庭園は、土地のアップダウンをいかして造られています。丘陵の樹林地を歩くと、池のまわりとはまた違ったひんやりとした空気が流れ、思わず深呼吸したくなるほど。
道中にはベンチが置かれていて、木陰でひと休みするのもおすすめです。場所によっては庭園を見下ろすことができ、緑に包まれながら眺める景色は癒しそのもの。
ヒールのある靴は少々歩きにくいかもしれません。スニーカーなど歩きやすい靴で訪れると安心です。
肥後細川庭園
東京都文京区目白台1-1-2
公式サイト
3. 滝が映える!ホテルニューオータニ・日本庭園(赤坂見附)

東京メトロ「赤坂見附駅」から徒歩わずか3分の場所にあるラグジュアリーホテル「ホテルニューオータニ」。広大な敷地の中には、約1万坪(東京ドームの3分の2ほど)の日本庭園が広がっています。しかも、宿泊者でなくても無料で入園できるから嬉しくなってしまいます。

ホテルニューオータニの日本庭園のシンボル的存在となっているのが、高さ6mの「大滝」。高低差のある地形を活かして造られた迫力のある滝で、夜にはライトアップも実施されます。
都会の真ん中にありながら、これほど大きな滝を擁する日本庭園はなかなかありません。夏には涼を届け、春や秋には季節の彩りとともに情緒ある景色を見せてくれます。

写真映えするのが「大滝」なら、人物をふくめた記念撮影スポットとして人気があるのが、鯉がおよぐ清泉池にかかる朱色の太鼓橋です。
私が訪れたときも、記念撮影をする人たちが順番待ちをしているほど。
そのほかにも園内では枯山水庭園など日本情緒あふれる景色が楽しめ、ただ歩くだけでも心が癒されます。

庭園の背後に見える建物には、ホテルニューオータニの人気スポット「ガーデンラウンジ」があります。実はこのガーデンラウンジがあるのは、ガーデンタワーの6階。庭園を歩いているとすぐそこに感じられるのに、実際には6階の高さに位置しており、庭園に大きな高低差があることがわかります。
「ガーデンラウンジ」からは、日本庭園を一望できるパノラマビューが広がり、大滝を真上から眺めることもできます。
ホテルニューオータニ・日本庭園
東京都千代田区紀尾井町4-1
公式サイト
4. 竹アートも美しい!グランドプリンスホテル高輪・日本庭園(品川)

こちらもホテルの敷地内にある日本庭園ですが、宿泊者でなくても無料で入園できます。
「プリンス さくらタワー東京」「グランドプリンスホテル高輪」「グランドプリンスホテル新高輪」の3つのホテルに囲まれるようにして、約20,000平方メートルの日本庭園が広がっています。

園内図を眺めると、最上部には「大宴会場 飛天」という文字が。その名に聞き覚えのある方も多いのではないでしょうか。「飛天」といえば、フジテレビ系列で放送される『FNS歌謡祭』の会場。豪華なシャンデリアが輝く華やかな舞台です。

庭園の大きな見どころのひとつが、東京にいることを忘れてしまうほど風情たっぷりの山門です。春には山門を覆うように桜が咲き誇り、まるで絵画のような美しさに包まれます。

山門へと続く「四季の小径」は、両側に竹筒が並ぶ趣ある小径。先に見える瓦屋根の建物と相まって、観光地を訪れたような高揚感を味わえます。
「四季の小径」という名前のとおり、竹筒には四季をイメージしたデザインが施されています。春は桜、夏はあじさい、秋は紅葉、冬は雪の結晶……歩くたびに表情を変える遊び心のある演出に心が和みます。

さらに見逃せないのが、竹あかり総合プロデュース集団「CHIKAKEN」が手がけたライトアップ。
夜になると、竹筒からこぼれるやわらかな光と青いライトが重なり合い、庭園全体が幻想的な空間へと変わります。昼間の落ち着いた風景とはまったく違う表情を楽しめるのも、この庭園の魅力です。

グランドプリンスホテル高輪・日本庭園
東京都港区高輪3-13-1
公式サイト
5. 朝7時から開園している!甘泉園公園(早稲田)

早稲田にある「甘泉園公園」は、朝7時から開園しています。朝の時間を持て余しているときや、都会の喧騒から離れて静かに過ごしたい朝におすすめの場所です。
面積は約14,235平方メートルと決して大規模ではありませんが、入園無料とは思えないほど手入れが行き届いていて美しく、さらに人も少なめで穴場的な存在。ゆっくり散策するにはぴったりです。

園内は上池と下池を中心とした池泉回遊式庭園。池のまわりをぐるりと歩くことができ、変化のある景色を楽しめます。
上池と下池の境目には飛び石があり、水面を間近に感じながら池を渡ることができます。上池から下池へと水が流れ落ちる様子を眺めていると、せせらぎの音に癒され、時を忘れてしまいそう。

また、上池に浮かぶ小島へと渡る石橋は、庭園らしい風情が漂うフォトスポット。

甘泉園公園は、四季を通じてさまざまな景色が楽しめるのも魅力です。春には桜やつつじ、初夏にはあじさい、秋には紅葉、そして冬には雪吊り。小規模ながら、訪れるたびに新しい表情を見せてくれるのが嬉しいところです。
園内には庭園を見晴らすことができる小高い丘もあります。多少のアップダウンがあるので、歩きやすい靴で訪れるのがおすすめです。
ベンチが数ヵ所に設けられているほか、大きめの東屋もあり、木陰でひと息つきながら景色を眺めるのも心地よいひととき。緑に囲まれた静かな空間で、のんびりと過ごすことができます。
甘泉園公園
東京都新宿区西早稲田3-5
公式サイト
6. 静かな時間がながれる!目白庭園(目白)

目白駅から徒歩5分。池袋駅からも徒歩圏内という便利な立地に「目白庭園」はあります。賑やかな池袋から歩いて行ける距離に、こんなにも静かな時間が流れる庭園が広がっているなんて、ちょっと驚いてしまいますよね。
こじんまりとした庭園ではありますが、都会の喧騒を忘れてのんびり過ごすにはぴったりの場所です。

目白庭園は、庭の中心に大きな池を配した池泉回遊式庭園。池のほとりには、石垣のうえに建つ数寄屋建築「赤鳥庵」があり、その前には休憩用のベンチが設けられています。
昼頃に訪れるとちょうど影になっていて、池を間近に眺めながらゆったりできる、最高の寛ぎスポットとなっていました。

広さ約500平方メートルの池には鯉がおよぎ、私が訪れたときには鴨の姿も見ることができました。生きものの気配が加わることで、庭園の景色がさらに生き生きとして見えます。
そして池に突き出すように建てられた六角形の「浮き見堂」は、目白庭園を代表する景観のひとつ。水面に映る姿も美しく、写真映えするスポットとして人気です。
目白庭園
東京都豊島区目白3-20-18
公式サイト
7. 大きな池をぐるっと囲む旧安田庭園(両国)

JR総武線「両国駅」から徒歩5分、都営大江戸線「両国駅」からも徒歩7分ほど。相撲の街・両国にある「旧安田庭園」は、池を中心にした落ち着いた日本庭園です。
池のほとりに腰を下ろし、のんびりと水面を眺めて過ごすひとときは、都会にいることを忘れさせてくれます。

旧安田庭園の大きな特徴のひとつが、人工的に潮入りを再現していること。もともとは「潮入り池泉回遊式庭園」として造られ、かつては隅田川の水を引き入れて潮の満ち引きを反映させていました。
水位調整のための水門は昭和40年ごろには閉じられましたが、現在はポンプを使って潮の干満を再現。水位の変化によって庭園の景色が移り変わる、珍しい仕掛けを持つ庭園なのです。

池に置かれた沢飛石。この写真では沢飛石がはっきりと見えますが、水位が上がると水に隠れてしまうこともあるそうです。潮の満ち引きによって景観が変わる、そんなちょっとした驚きも、この庭園ならではの楽しみです。

私が訪れたのは5月で、園内のいたるところにツツジが咲き誇り、とても艶やかでした。秋にはこの太鼓橋が紅葉に彩られ、また違った美しい景色を見せてくれるのだろうと想像すると、訪れるのが楽しみになります。
旧安田庭園
東京都墨田区横網1-12-1
8. 竹林も美しい高低差のある「等々力渓谷日本庭園」(等々力)

東京23区唯一の渓谷である「等々力渓谷」に日本庭園があることをご存知でしょうか。渓谷の南側に静かに広がっています。
面積こそ大きくはないものの、高低差をいかした庭園は変化にとんだ景色を楽しめます。

庭園への入口は3か所。そのなかでも谷沢川沿いにある「かぶき門」は特に風情があります。門をくぐるとすぐ目の前に竹林がとびこんできて「わぁ」と声をあげたくなるような光景に包まれます。
竹林の間を縫うように石段が続きます。立ち止まって振り返ると、「かぶき門」と石段、そして竹林が一枚の絵のような美しさで思わず写真を撮りたくなってしまいます。

庭園は、かぶき門から入れば上へ上へと登っていくような造り(正門から入れば逆に下っていく構造)。その頂点には書院があり、休憩所として開放されています。
セルフサービスのお水やお茶も用意され、縁側に腰を下ろして一息つけば、ほっと落ち着きます。

また、書院周辺は苔むした緑が美しく、日本庭園ならではの風情を感じさせてくれます。
等々力渓谷日本庭園・書院
東京都世田谷区野毛1丁目15-15
9. 水車公園 日本庭園「徳水亭」(下赤塚)

東武東上線「下赤塚駅」より徒歩15分、東京メトロ副都心線「地下鉄赤塚駅」より徒歩17分ほどの場所に広がる「水車公園」。その一部として日本庭園があります。
庭園は、茶室「徳水亭」の周りの茶庭と池を中心とした浄土式庭園です。浄土式庭園とは平安時代後期に広まった庭園様式で、「極楽浄土の世界」を池や建物で表現したもの。

園内に広がる池は、「心」の字をかたどった心字池。9月上旬に訪れたときは、池や滝のまわりにきれいなピンク色をした百日紅(さるすべり)が咲いていました。

茶室の出入口前には美しく整備された枯山水も。9個の石が置かれていますが、これは仏教の世界観にある「須弥山(しゅみせん)」を表現したもの。
面積は約1,200平方メートルとこぢんまりとしているものの、見どころがぎゅっと凝縮されており、変化に富んだ景色が楽しめます。
この規模だからこそ、なんだか隠れ家を見つけたようで嬉しくなります。

水車公園 日本庭園
東京都板橋区四葉1-16
公式サイト