東京23区にも、秋の色づきを静かに味わえるお寺があります。紅葉やイチョウが美しい場所を厳選してご紹介しています。
1. 自由が丘から歩ける九品仏浄真寺(九品仏)

九品仏浄真寺の最寄駅は東急大井町線「九品仏駅」で、駅名の由来にもなっているお寺です。自由が丘駅からも徒歩圏内にあり、洗練された街並みのすぐそばに、これほど広大で静かな境内が広がっていることに思わず驚いてしまいます。
春には新緑、初夏には深い緑と、いつ訪れても美しい景色が楽しめますが、紅葉の時期は格別です。境内のいたるところで色づくモミジやイチョウが重なり合い、歩くたびに鮮やかな景色に出会えます。

なかでも人気の撮影スポットが、境内から総門へと続く紅葉風景。黄色い落ち葉の絨毯に、真紅のモミジが映える光景は思わず足を止めたくなる美しさです。

寛政5年(1793年)に建立された山門も見どころのひとつ。堂々とした姿に加え、紅葉が覆いかぶさるように色づく様子は風情があり、ここが東京であることを忘れてしまうほどです。
九品仏浄真寺
東京都世田谷区奥沢7丁目41-3
公式サイト
2. 竹林も美しい観泉寺(上井草)

西武新宿線「上井草駅」から徒歩約12分。住宅街の中に佇む観泉寺は、東京23区で静かに紅葉を楽しめる穴場の寺院です。創建は室町時代と伝わり、曹洞宗の寺院として長く地域に親しまれてきました。
観泉寺は今川家ゆかりのお寺で、境内には今川家代々の墓があり東京都の旧跡に指定。お寺がある辺りは「今川」という地名ですが、今川家が由来となっています。
まず目を引くのが瓦塀のある通り。しっとりとした佇まいで、思わず京都を歩いているような気分になります。

そして、境内へ一歩足を踏み入れると、真っ赤に色づいた紅葉と、黄金色の葉をつけた立派な大イチョウがお出迎えしてくれます。参拝に訪れる人が季節を楽しめるよう、丁寧に手入れされているのが伝わってきます。

敷地内には小さいながらも池泉観賞式の庭園があります。優雅な曲線を描く池のかたちが美しく、つい眺めていたくなる空間です。

さらに境内には竹林の小径もあります。紅葉と竹の緑が重なる風景のなかを歩けるのは、とても贅沢な秋のお散歩。人が多くないので、自分のペースでのんびりと味わえるのも魅力です。
観泉寺
東京都杉並区今川2-16-1
公式サイト
3. 願いを叶えてくれる待乳山聖天(浅草)

浅草といえば、東京を代表する観光名所のひとつである「浅草寺」があまりにも有名ですが、「待乳山聖天(まつちやましょうてん)」は浅草寺の支院のひとつです。
紅葉の季節には、境内のイチョウがまばゆいほどに色づき、見事な景観をつくり出します。2023年に改修工事を終えたばかりの山門は新しく美しく、黄金色のイチョウが覆いかぶさるように広がる光景は思わず見惚れる美しさです。

「どんな願いも叶えてくれる」パワースポットとしても知られる待乳山聖天は、夫婦和合、商売繁昌、身体健全などのご利益があるとされ、特に大根と巾着のモチーフが象徴として奉納されているのが特徴です。

さらに、隣接する庭園は訪れる人も少なく、静かに紅葉を楽しめる穴場スポット。園内の高台からはスカイツリーを望むことができ、紅葉と合わせて撮影できる絶好のロケーションです。
浅草の喧騒から少し離れて、ゆったりと季節を味わえる貴重な場所です。
待乳山聖天
東京都台東区浅草7−4−1
公式サイト
4. 招き猫も紅葉に彩られる「豪徳寺」(宮の坂)

お寺と同じ名前の小田急線「豪徳寺駅」からは徒歩約15分ですが、最寄りは東急世田谷線「宮の坂駅」で、こちらからは徒歩5分ほどとアクセスも良好です。曹洞宗の寺院で、彦根藩主・井伊家の菩提寺として知られています。
東京の紅葉名所としても人気の高い豪徳寺は、境内にずらりと並ぶ「招き猫」でも有名です。招き猫発祥の寺と伝わる説もあり、訪れる人が絶えません。

紅葉の季節には、招き猫の背景に赤や黄の彩りが重なり、いつもとはひと味違う景色を見せてくれます。まるで色づいた木々をバックに、招き猫たちが記念撮影をしているようで、思わず微笑んでしまう愛らしさです。

見どころのひとつである「三重塔」も、紅葉の着物を身にまとったように艶やか。「三重塔」は側面から見ても紅葉との共演が美しいので、ぜひさまざまな角度からご覧になってみてください。
豪徳寺
東京都世田谷区豪徳寺2-24-7
公式サイト
5. 紅葉と静寂に包まれる「道場寺」(石神井公園)

石神井公園のすぐそばにある「道場寺」は、応安5年(1372年)に建てられたと伝わる歴史あるお寺です。山号は「豊島山」、院号は「無量院」で、正式には「豊島山 無量院 道場寺」と称します。かつて石神井一帯を治めていた豊島氏の菩提寺として創建されたとされ、地域と深くゆかりのある寺院です。
道場寺の伽藍(寺院の中心となる建物群)は、日本の古典建築様式を取り入れてつくられています。紅葉に彩られた山門は、室町時代に成立した室町様式をもとにつくられたもの。

とりわけ存在感を放つ三重塔は、昭和48年に建立された総檜造りで、鎌倉様式の優雅な佇まい。紅葉が重なるように色づく季節には、思わず見上げてずっと眺めてしまう美しさです。

山門からまっすぐ延びる参道の正面に建つのは、奈良・唐招提寺の金堂を模した天平様式の本堂。現在の本堂は昭和12年(1937)に改築されたもので、端正な佇まいが印象的です。
道場寺
東京都練馬区石神井台1-16-7
6. 木組の舞台から紅葉を見晴らす等々力不動尊(等々力)

世田谷区にある「等々力不動尊」は、世田谷区で唯一の渓谷である等々力渓谷の崖上に建つ寺院です。正式には「滝轟山 明王院 等々力不動尊」といい、真言宗智山派の満願寺の別院として知られています。渓谷散策とあわせて訪れる人も多く、自然と寺院が近くに感じられる場所です。
東京の紅葉名所として大きく取り上げられることは多くありませんが、境内には紅葉を眺められる見晴台や、斜面に張り出すようにつくられた木組の舞台があり、秋の景色を楽しめるスポットが点在しています。

写真は紅葉が始まりかけの頃の様子。緑が残りつつも、ところどころ色づき始めた葉が境内に季節の移ろいを添えていました。紅葉が進むと、見晴台や舞台から鮮やかな彩りを望むことができます。
青空の下に朱色の灯籠が映え、和の風情が感じられる景色も心を癒してくれます。

境内にはソフトクリームや飲み物を販売する売店もあり、ほっと一息つきながら紅葉狩りが楽しめます。
満願寺・等々力不動尊
東京都世田谷区等々力3-15-1
公式インスタグラム



