にぎやかな東京の中にも、時間が止まったみたいな場所があります。今回は、東京都内で江戸らしい風情を感じられる魅力的なスポットをご紹介します。歴史と現代が交差する東京で、江戸時代へのちょっとした小旅行に出かけてみませんか。
1. 佃島(月島)

月島駅から歩いて数分の場所にある「佃島」。電車でアクセスできるので、今はあまり「島」という感じはしませんが、もともとは江戸湾に浮かぶ小さな島でした。明治以降の埋め立てによって月島と陸続きになり、現在は中央区の下町の一角になっています。
小さな街ですが、江戸時代の漁師町の風情が今も感じられます。佃堀には船が停まり、その背後には高層マンションが立ち並ぶ。その対比が、江戸と現代の東京を同時に味わっているような、不思議な景色をつくり出しています。

佃島といえば「佃煮発祥の地」として知られています。江戸時代初期、徳川家康に従って大阪・佃村から移り住んだ漁師たちが、隅田川で獲れた小魚を醤油で煮付け、保存食として工夫したのが始まりとされています。
現在も老舗の佃煮屋さんが軒を連ね、その一つが「天安」。1837年の創業当時から受け継がれてきたタレを使い、江戸時代からの味を守り続けています。
私が訪れた際も、小さなお店に入っていくお客さんを何人も見かけました。

佃島のすぐ隣、石川島にあった「石川島灯台」を再現した建物も建っています。現在はお手洗いとして使われていますが、柳の木が風に揺れる様子とともに、この一帯に江戸情緒を伝えています。
佃島
東京都中央区佃
2. 寛永寺 清水観音堂(上野)

上野公園の一角に佇む「寛永寺 清水観音堂」は、江戸時代初期の1625年(寛永2年)に、天台宗の僧・天海大僧正によって創建された寺院「寛永寺」のひとつの堂宇です。国の重要文化財に指定されています。
京都・東山の清水寺を模した舞台造りの堂宇で、1631年(寛永8年)に建立されました。

高さは清水寺ほどではないものの、広々とした舞台に立つと、京都の清水寺を訪れたときのような感覚を覚えます。
清水観音堂の最大の見どころは、舞台の前に枝を広げる名物「月の松」です。この松は、歌川広重が「名所江戸百景」の一図「上野清水堂不忍ノ池」に描いたことで知られています。円形に仕立てられた松の枠越しに、不忍池と弁天堂を望む景色は、いかにも江戸情緒を感じさせる眺めです。
清水寺を模して建てられた観音堂からの眺めは、江戸時代の人々にも親しまれてきたそうです。丸い松の輪を通して景色を眺めていると、当時の人々がここで感じていた時間や空気へと、自然と思いを馳せてしまいます。

江戸時代、現在の上野恩賜公園周辺は、徳川家の菩提寺である寛永寺の広大な寺域でした。こうして地図を眺めてみると、上野公園は単なる憩いの場ではなく、江戸の面影を感じながら歩ける場所なのだとあらためて気づかされます。
寛永寺
東京都台東区上野桜木1-14-11
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3. 三代豊国五渡亭園(亀戸)

二連の朱塗りの太鼓橋が目を引く「三代豊国五渡亭園(さんだいとよくにごとていえん)」は、首都高速7号線の高架下に広がる庭園です。延長約2.4キロに及ぶ「竪川河川敷公園」の一角にあり、場所柄、雨の日でも利用しやすいのが特徴です。

首都高速の高架下に、これほど風情のある庭園が広がっていることにも驚かされますが、さらに目を引くのが、池の中を泳ぐ彩りどりの鯉の姿です。
池には約600匹もの鯉がいるそうで、近づくとこちらに寄ってくる姿がとても愛らしく感じられます。なお、鯉へのエサやりは禁止されています。

三代豊国五渡亭園は、江戸時代後期に活躍した人気浮世絵師・三代歌川豊国(歌川国貞)にゆかりのある地として、地域の歴史を伝える目的で整備され、2012年(平成24年)に開園しました。
三代歌川豊国は1786年(天明6年)に本所五ツ目(現在の亀戸五・六丁目付近)で生まれ、生涯の多くを亀戸周辺で過ごしたと伝えられています。
庭園の近くには浮世絵も飾られており、江戸文化を肌で感じながら散策が楽しめます。
三代豊国五渡亭園
東京都江東区亀戸6
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4. 江戸東京たてもの園(武蔵小金井)

都立公園で3番目の広さを誇る大きな「小金井公園」の敷地内に、江戸東京たてもの園はあります。名前だけ聞くとテーマパークのようですが、実際には野外博物館です。
とはいえ、江戸時代から昭和中期までの復元建造物30棟が立ち並ぶ園内に足を踏み入れると、まるで江戸時代にタイムスリップしたような街並みが広がり、テーマパーク気分で散策を楽しめます。
上の写真は「下町中通り」。園内でもっとも江戸らしい風情を感じられるエリアで、高畑充希さんが主演のNHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』のポスターは、この「下町中通り」がモチーフとなりました。

多くの建物は内部の見学も可能です。ジブリ映画『千と千尋の神隠し』で油屋のモデルになった銭湯「子宝湯」は、レトロな雰囲気が色濃く感じられ、思わず写真を撮りたくなる場所です。
私は「江戸東京たてもの園」には何度か訪れていますが、そのたびに着物や浴衣姿で散策している女性を見かけます。江戸東京たてもの園は、和装がとてもよく似合う場所だと感じます。

こちらは江戸ではなく大正ロマンを感じる建物ですが、園内には歴史的建造物を活用したカフェもあり、ゆっくりと飲食を楽しめます。
江戸東京たてもの園は、時代を遡ったような非日常の時間を過ごしたいときに、訪れてみたくなる場所です。
江戸東京たてもの園
東京都小金井市桜町3-7-1
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5. 木場親水公園(木場)

東京メトロ東西線「木場駅」3番出口から歩いてわずか2分ほどの場所に、木場親水公園はあります。全長は約900メートル、面積は1.9ヘクタール。細長く南北に伸びる、水辺が心地よい公園です。
江戸時代から木材の集積地として栄えた「木場」の歴史を背景に、水辺の憩いと江戸情緒を感じられるよう整備されています。
なかでも、公園のシンボルともいえる木製の太鼓橋「鶴の橋」と、そのそばに揺れる柳の木がつくり出す景色は、江戸情緒たっぷり。太鼓橋は、江戸の町並みでもよく見られた意匠のひとつです。

川には和船が停留し、江戸時代の渡し場を思わせる休憩所も設けられています。水辺との距離がとても近く、ただ歩いているだけでも、自然と気持ちがほどけていきます。

川沿いには常夜灯のオブジェも置かれており、灯りがともっていたであろう江戸の暮らしを思い浮かべながら歩くと、まるでタイムスリップしたような気分になります。

木場親水公園
東京都江東区木場3-18
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6. 小野路宿里山交流館(町田)

小野路宿里山交流館は、観光交流の拠点として整備された施設です。江戸時代に甲州街道と八王子道を結ぶ交通の要衝として栄えた宿場町「小野路宿」にあり、旅籠のひとつだった「角屋(かどや)」を改修してつくられました。
立派な長屋門をくぐって敷地に入ると、宿場町だったころの気配が、そのまま残っているように感じます。

施設の中心となっているのが主屋です。館内には、小野路産の野菜や果物、加工品が並ぶ「物産・直売コーナー」、散策に役立つ地図やバス時刻表をそろえた「情報コーナー」、そして食事やお茶を楽しみながら休憩できる「交流スペース」が設けられています。

飲食も可能で、私は「小野路うどん」と「里山コロッケ」をいただきました。お食事メニューはこの2つのみ。とてもシンプルで、迷わずに選べるのがいいですね。
小野路産の地粉を100%使用したうどんは、一般的なうどんとは少し違い、どちらかというとお蕎麦に近い食感です。温かいつゆには豚肉やごぼうも入っていて、見た目以上に食べごたえがありました。

小野路宿里山交流館が面しているバス通りは、「小野路宿通り」と呼ばれています。かつては旅籠や商家が軒を連ねていた場所で、現在も黒塀の家並みや町割りに、宿場町だったころの面影が残っています。
景観を守るために電柱の地中化が進んでいるため、電柱も少ないです。車の通りはそこそこあるものの、せせらぎも流れており、のどかな雰囲気が漂います。
通りを歩いていると、当時の往来の様子が自然と思い浮かんできます。
小野路宿里山交流館
東京都町田市小野路町888-1
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