SNSがなかった頃、あるいは今ほど盛んではなかった頃、そしてスマホがなかった頃……比べるといえば自分のまわりの人たちだけでした。身近にすごい人がいたとしても、実際に会って話してみると「意外と普通の人なんだな」と感じられて、そこまで大きな差はないように思えます。
けれど今は、世界中のまったく知らない人の才能や成功、暮らしを、簡単に知ることができる時代。しかも「知らない誰か」だからこそ、ただただすごい人に思えたり、うやましく思えて、自分のことが小さく感じられたりします。
他人と比べて心をすり減らすなら
SNSやネットニュースで、知らない誰かの活躍や成功、才能や暮らしぶりに触れると、「わたしも、こんなふうになりたいなぁ」「こんなことがしたいなぁ」「わたしも、がんばらなきゃ!」とやる気や希望が生まれることがあります。そういう気づきや刺激を得られるなら、とてもいいことですよね。
でも、その一方で「今の自分」と比べて落ち込んでしまうこともあると思います。頭では「気にしなくていい」とわかっていても、SNSは楽しい要素も多いし、つい見てしまう仕組みがたくさんあります。だからこそ、意識的な距離感が必要なのだと思います。
とくに相手が自分よりうんと年下だったりすると、「私はこれまで何をやってきたんだろう」と一気にズドン気持ちが沈んでしまう。そんなことは、わたしにもありました。
他人と比べて得られるものは少なくて、むしろ心をすり減らしてしまうことのほうが多いです。だからこそ、比べるなら「他人」ではなく「昨日の自分」。そう切り替えるようになってから、気持ちがぐっと楽になりました。
見えているのは切り取られた一瞬
人の成功や結果の裏には、表からは見えない努力や時間が必ずあります。SNSに映るのは、あくまで切り取られた一瞬。見えない積み重ねまでは、誰にもわからないものです。
たとえば、華やかな舞台に立つまでに、どれだけ不安と向き合ったのか。美しい写真を投稿する裏側で、どれだけの工夫や苦労があったのか。そこまでは画面越しには伝わってきません。
キラキラした生活を送っているように見える人だって、心の中では葛藤を抱えていたり、誰にも言えない悩みを持っていたりするかもしれません。私たちが見ているのはほんの一部にすぎないのです。
だから、目に見えるものだけで相手と比較して落ち込むことは、ただただ自分にやさしくない行為だと思うのです。
昨日の自分より成長している実感をもつには
成長を感じたいときは、「できなかったこと」ではなく「できたこと」に目を向けてみるのがおすすめです。
たとえば、5分間だけ筋トレをしたなら、その分だけ体を動かせた自分がいる。ほんの数ページでも本を読んだなら、その分知識や感性が増えている。
成長というと数字や目に見える変化を想像しがちですが、本当は「昨日よりちょっといい自分」を積み重ねていくことなんだと思います。
わたしの場合、昨日は甘いものを食べませんでした。「食べたいなぁ」と思ったけれど、仕事に集中しているうちにその気持ちを忘れてしまい、そのまま夜ご飯の時間になったんです。
「あ、今日は甘いものを食べなかったな」──それだけで昨日より「ちょっといいな、自分」と思えました。
数字や見た目が変わらなくても、「いいな」と思える自分を見つけられると気持ちが前に進みます。きっと、それが大切なのだと思います。
自分の人生そのものに夢中になる
「不安になるのも、悩むのも、暇だから」と言われることがありますが、他人と比べるのも暇があるからなのかもしれません。
自分の人生に夢中になっていたら、他人と比べている暇なんてありませんし、そもそも、SNSやネットニュースをずっと見てしまうのも、見る時間があるからです。
スマホひとつで簡単にいろんな情報が手に入るようになって、人の動向に気をとられる時間が増えてしまったけれど、思い返すとSNSがなかった頃や、ガラケーだった時代は、もっと「自分の人生そのもの」に夢中だったなぁと思います。
もちろん今の時代、SNSやネットと完全に切り離して生きるのは難しく、情報に触れることにもたくさんのメリットがあります。だから、自分がどう使うかを選ぶことが大事なのだと思います。
結局は「自分ができることをやるしかない」
誰かと比べて焦っても、落ち込んでも、現実は変わりません。ただ止まっている時間が長引くだけ。もしかしたら無意識に、「動きたくない」理由にしてしまっているのかもしれません。
どうあがいたって、結局、自分ができることを一つずつやっていくしかなくて、それでいいのだと思っています。
自分は自分の人生しか生きられません。人の人生に気を取られるより、自分の人生を作り上げていくことに目を向けたほうが、毎日がもっと楽しくなるはず。
比べるよりも、自分が「どんなふうに過ごしたいか」「どんなふうでいたいか」「どんなふうになりたいか」に焦点をあてる。
そして、その思いに向かって昨日より少しずつでも成長していければ、それで十分。その積み重ねが力となり、未来に繋がっていくのです。