私は、次の3つのとき、ネガティブになりやすいと感じています。それは、夜遅い時間、寒いとき、そして疲れているとき。
夜はなるべく早く寝るにかぎると思っていますし、寒い季節なら体をしっかり温めたい。疲れているときには、「ああ、私は疲れているんだ」と素直に認めて、考え事をしないようにしています。
わざわざネガティブになって自分を嫌な気持ちにさせたり、本心とは裏腹の行動をとってしまったりしないように、事前に防げるなら防ぐ──そんなふうに心がけています。
疲れているときはネガティブになりやすい
普段ならそんなことを思わないのに、ぐったりと疲れているときほど「あぁ、もうダメかもしれない」「無理かもしれない」といった悲観的な考えが頭をよぎることがあります。
私の場合、おでかけライターという仕事柄、一日中歩き回って疲れ果てた帰り道に「今日のスポット、取材が足りなくていい記事にできないかもしれない……」と弱気になることがあります。
けれどそんなとき、「あ、これは疲れているからネガティブになっているだけなんだ」と気づけると、「じゃあ、大丈夫だ」と安心できて、「もう考えるのはやめよう」と切り替えられるのです。そして、そのままとことん”休むモード”に入ります。
「今日の夜はゆっくりお風呂に入ろう」と決めて、湯船につかって「はぁ〜」とリラックスしている自分を思い浮かべると、それだけで気持ちがぐいっと上向きにさえなります。
こうして疲れているときにネガティブな考えが頭をよぎることは、誰しも経験したことがあるのではないでしょうか。
なぜ疲れているとネガティブ思考になるのか
脳の仕組みを見ても、疲れているときにネガティブになりやすい理由が説明できます。
前頭前野の機能が弱まる
脳の前頭前野は、感情をコントロールしたり冷静に判断したりする役割を担っています。ところが、睡眠不足のときや、仕事などで疲れがたまると、この部分の働きが落ちてしまい、感情に流されやすくなります。
そのため、冷静な判断よりも不安や恐れといったネガティブな感情のほうが優位になりやすくなるのです。
扁桃体が働きすぎて不安に傾く
脳の扁桃体は「危険を察知するセンサー」とも言われています。ストレスや疲れが強くなると、この扁桃体が過剰に反応してしまい、些細な出来事も「脅威」であると捉えてしまいます。
その結果、LINEの返信が少し遅れただけで落ち込んだり、何気ない言葉に過敏に反応してしまったり、実際は大したことがない事も深刻に受け止めてしまいがちになります。
科学的研究でわかっていること
アメリカ・ペンシルベニア大学の研究によると、睡眠不足のときは扁桃体の活動が60%以上も高まることが明らかになっています。
また、疲労がたまるとポジティブな刺激への反応は鈍くなり、ネガティブな刺激にばかり敏感になる傾向も報告されています。
つまり、疲れているときに考え事をすると「つい悪い想像ばかり浮かんでしまう」のは、脳の仕組みからみても当然のことだと言えます。
疲れているときは、いさぎよく考え事をしない
睡眠科学の研究でも、不眠に悩む人の多くが「寝る前に考え事をしてしまう傾向が強い」と報告されています。
一日の疲れがたまっている夜は、どうしてもネガティブ思考に傾きやすくなります。そんなときに考え事をすれば不安拡大モードに陥ってしまい、昼間なら「大丈夫だ」と思えることでも、「ダメかもしれない」と大きな問題に見えてしまうもの。
そして眠れなくなり、翌日も疲れが残ったまま、さらにネガティブに──そんな悪循環を生まないためには、「疲れているときは考えない」と決めてしまうのがいちばんです。
これも、自分を大切にすることの一つ。
わざわざ疲れているときに考え事をしなくても、明日の朝、考えればいいのだから!
考え事をせず、気持ちよく寝て、翌朝すっきり目覚めると、不思議なくらい心が軽くなっていたり、同じ出来事も「大したことじゃなかった」と思えることが多いものです。
これは脳がちゃんと休まって、前頭前野の働きが回復し、感情のバランスが整うから。つまり「一晩寝かせる」ことには、ちゃんと科学的な意味があるのです。
「疲れているときは、脳がエネルギー不足に陥っているんだ」──そう考えると、「じゃあ、今はエネルギーをためる時間にしよう」と思えてきます。
余計な考え事をやめて、脳をそっと休ませてあげる。そうすれば、きっと明日の朝には、またいつもの自分らしい考えや前向きな気持ちが戻ってきているはずです。