歴史と自然に恵まれた古都・鎌倉には、魅力あふれるお寺が数多く点在しています。ここでは、私が実際に訪れたお寺のなかから、とくに「素敵だなぁ」「また訪れたいなぁ」と感じた場所をご紹介します。鎌倉には一説によると100以上のお寺があると言われています。その中から、どこを訪れようか迷っている方の参考になれば嬉しいです。
1. 枯山水を眺めながらお抹茶がいただける「浄妙寺」

鎌倉五山・第五位という格式のあるお寺「浄妙寺」。鎌倉五山とは鎌倉時代に定められた禅宗(臨済宗)のお寺の格付けのことで、ちなみに第一位が建長寺、第二位が円覚寺、第三位が寿福寺、第四位が浄智寺です。
鎌倉駅から歩くとなると、徒歩30分ほどかかりますが、バスで訪れることもできます。近くには竹寺として知られる「報国寺」があるので、あわせて訪れるのもおすすめ。

境内には茶室「喜泉庵(きせんあん)」があり、美しい枯山水の庭を眺めながら、お抹茶とお菓子でひと息つくことができます。
庭園に出ることはできませんが、茶室からは間近に眺めることができ、竹筒を使って心地いい水琴窟の音色を聞くこともできます。

座席は2種類あり、ひとつは緋毛氈(ひもうせん)に座っていただく席。そしてもう一つが、テーブル席。どちらの席からも、もちろん庭園を眺めることができます。

お抹茶と生菓子のセットは、夏には冷抹茶も選べます。生菓子は、鳩サブレで知られる「豊島屋」さんのもので、四季折々のデザイン。
私が訪れたのは暑い日でしたが、風が心地よく通り抜け、終始快適に過ごせました。季節を変えて訪れれば、その時々の色に染まる庭園を眺めながら、生菓子からも季節を感じるひとときを楽しめそうです。
浄妙寺
神奈川県鎌倉市浄明寺3-8-31
公式サイト
2. 森林浴気分で歩きたい緑深い禅寺「浄智寺」

JR横須賀線「北鎌倉駅」から徒歩8分ほどの場所にある「浄智寺」は、鎌倉五山第四位の格式を誇る禅寺です。
駅から歩いて8分とは思えない、どこか山奥にひっそりと広がっているような緑深いお寺。山門前から神秘的な雰囲気で、小さな池にかかる苔むす石橋が風情たっぷりです。

山門とその奥の石段までは拝観料を払わずに見学できますが、拝観料を納めて最初に目にするのが「鐘楼門」です。名前のとおり鐘楼を備えた門で、鎌倉ではここでしか見ることができない貴重な建築です。

浄智寺では順路に沿って拝観していきます。途中、目の前に現れるのは茅葺き屋根の「書院」。大正13年に建てられたそうで、素朴さが返って美しさを引き立てます。書院のまわりに広がる庭園には季節の花が咲き、境内でも美しい景観のひとつです。

そして浄智寺といえば、鎌倉七福神のひとつ「布袋さま」。お腹を撫でると福が訪れるとされ、たくさんの人に撫でられたお腹は少し黒くなっています。
浄智寺
神奈川県鎌倉市山ノ内1402
公式サイト
3. とくに萩が有名な静かな花寺「海蔵寺」

鎌倉駅から徒歩約20分、北鎌倉駅からは徒歩約25分と、駅から少し距離があるためか、四季折々の花が咲く美しいお寺にも関わらず、静かに楽しめる穴場の「海蔵寺」。
扇ガ谷の静かな山裾にたたずむ境内は深い緑に囲まれ、シンボルにもなっている赤い野点傘が趣を添えています。
海蔵寺は、鎌倉幕府を支えた北条氏ゆかりのお寺として1301年(正安3年)に創建。その後いったん衰えましたが、1394年(応永元年)に鎌倉を治めていた足利氏満によって再興されました。

四季折々の花が咲く海蔵寺ですが、なかでも有名なのが秋のはじめに咲く萩。山門へとつづく石段の両側を、赤紫や白の花をつけた萩がしなやかに枝垂れ、訪れる人をやさしく迎えてくれます。
萩に包まれながら、まるで祝福されているように石段をのぼるひとときは、この時期だけの特別な体験です。

季節を変えて夏に訪れたときは、白と紫のキキョウが涼しげに咲いていました。鎌倉でこれほどキキョウを楽しめる場所は、なかなか貴重だと感じます。

本堂の裏にまわると庭園が広がっています。中に入ることはできませんが、一部を垣間見ることができ、自然の地形を生かした素朴な趣が、侘び寂びを感じさせます。
海蔵寺
神奈川県鎌倉市扇ガ谷4-18-8
4. 一度は見たい国指定名勝の岩庭が広がる「瑞泉寺」

鎌倉の奥座敷・二階堂エリアに佇む「瑞泉寺」。鎌倉駅から歩くと30分ほどかかるため、観光客は比較的少なく、静かな境内を自分のペースでゆっくりと巡れるのが嬉しいお寺です。(近くまでバスで行くこともできます)
総門から山門までは距離があり、緑に包まれた石段をゆっくりとのぼっていきます。道の途中には竹林が現れ、清々しい雰囲気に心が和みます。

花の寺としても親しまれている瑞泉寺。本堂へつづく石畳の両側にフヨウが植えられており、夏の終わりから秋にかけて真っ白な花を咲かせます。

そして、本堂の裏へ進むと、国の名勝である庭園が姿を現します。
この庭園は、瑞泉寺を開いた夢窓疎石(むそうそせき)によって造られた、鎌倉で唯一のこる鎌倉時代の庭園です。1970年(昭和45年)の発掘調査にもとづいて、創建当初の姿に近い形で復元されました。

大きくくり抜かれた洞穴は「天女洞(てんにょどう)」と言います。別名「水月観道場」とも呼ばれ、ここで座禅を組み、手前につくられた貯清池に映る月を眺めながら修行が行われていたそうです。
瑞泉寺
神奈川県鎌倉市二階堂710
公式サイト
5. とくに彼岸花が有名な花寺&竹林も美しい「英勝寺」

鎌倉駅の西口から徒歩10分と、アクセスしやすい「英勝寺」。鎌倉にある花寺のひとつで、とくに彼岸花の名所として知られています。
境内は広くはないものの、国の重要文化財を多く抱えているのも特徴。彼岸花の季節には重要文化財と彼岸花の共演も楽しめます。

境内には、岩をくりぬいた洞窟と、その隣には聖観世音菩薩(しょうかんぜおんぼさつ)と、太子堂。静かな境内にありながら、こうした変化に富んだ景色が広がっています。

鎌倉で竹寺といえば報国寺がよく知られていますが、英勝寺にも立派な竹林が広がります。まっすぐに伸びた竹が日差しをやわらげ、ほの暗い静けさが心を落ち着かせてくれます。途中にはベンチも置かれ、散策の合間にひと休みできるのも嬉しいところです。

書院には藤棚が設置されています。英勝寺で見られるのは白藤で、見頃を迎える例年4月下旬ごろには純白の世界を楽しむことができます。
英勝寺
鎌倉市扇ガ谷1-16-3
6. 苔むす石段が神秘的な「杉本寺」

浄妙寺へ向かう途中にある「杉本寺」は、734年(天平6年)に開山した鎌倉最古のお寺です。歴史を感じさせる茅葺き屋根の山門(仁王門)が、訪れる人をまず出迎えてくれます。

山門をくぐり少し石段をのぼると、いよいよ苔むす石段のお目見えです。石段に沿って「十一面杉本観音」と書かれた白い奉納旗がズラリと並ぶのもまた荘厳な雰囲気。
まるで別世界に足を踏み入れたようで、ミシュラン・グリーンガイドで、「寄り道する価値がある」とされる二つ星を獲得するのも納得してしまいます。

苔むす石段はのぼることができず、横にある石段をのぼっていくと本堂にたどり着きます。本堂も、立派な茅葺き屋根。源頼朝の寄進による運慶作とされる十一面観音など、貴重な仏像を見ることができます。

境内には見晴らしのいい場所もあり、目の前に広がる緑と開けた景色に、思わず深呼吸をしたくなります。
杉本寺
神奈川県鎌倉市二階堂903
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7. 見どころいっぱい!海を見晴らす絶景が楽しめる「長谷寺」

鎌倉を紹介するガイドブックには必ず登場する、鎌倉を代表するお寺のひとつ「長谷寺」。なかでも「あじさい寺」として名高く、初夏には「あじさい路」に行列ができるほどの人気です。

あじさいの季節以外にも、長谷寺は見どころが多く、一度は訪れたいお寺です。とくに境内から眺める、鎌倉の街並みと由比ヶ浜の景色は最高!海を一望するお食事どころもあります。

境内には微笑みを浮かべる良縁地蔵もいます。3カ所すべての良縁地蔵をみつけると良縁に恵まれると噂されているので、ぜひ見つけてみてくださいね。

美しい枯山水庭園が広がるのは書院。ここでは毎日、自由に写経を体験できます。鎌倉の静かな空気の中で筆をとり、心を落ち着けて写経をする時間は、旅の特別なひとときになります。
長谷寺
鎌倉市長谷 3-11-2
公式サイト